上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
「ぷはぁーっ! やっぱり温泉に浸かりながらの一杯は格別なのだ」
集会浴場から見える山々を見下ろす絶景を肴に、ユウは温泉に浸かりながら酒を飲んでいた。
「ご主人様、こんなにのんびりしていて、本当にいいのかニャ?」かんぴょうがユウに問い掛けるが、その言葉とは裏腹に、完全にリラックスしきった表情である。
「そうだニャ。せっかくこの村専属のハンターになったのに、狩猟の依頼はほとんど旅のハンター任せになってるニャ」
玉露もユウに苦言を呈すが、こちらもリラックス……というよりも、すっかりだらけきった様子で、言葉に全く説得力が無かった。
ユウがユクモ村にやってきて、ひと月が経とうとしていた。
しかし、彼女は大型モンスターの狩猟依頼を全て村に立ち寄ったハンターに譲り、自身は採取依頼などの比較的地味とも言える依頼を中心に請け負っていた。
「だんだん、村の人たちもご主人様の実力を疑問に思いはじめてるニャ。 本当にそれでいいのかニャ?」
玉露がもっともらしいことを言うが、やはりだらけているため、その言葉にはなんの重みも説得力もない。
「狩猟依頼かー」ユウは伸びをすると、気だるそうに呟く。
「私、ドボルベルクの背中のコブで昼寝したときの寝心地を調べる依頼がいいな」
「……ご主人様、そんな依頼絶対無いニャ」ユウの言葉に、思わずツッコミを入れるかんぴょう。
「えー? そんなん分かんないじゃん。ひょっとしたら、どっかの物好きな王族がそんな依頼持ってくるかもしれないじゃん」不満げに口を尖らせるユウ。
「いくら王族に物好きが多いといっても、自分を危険にさらしてまでそんなことを試そうとする阿呆は居ないと思うニャ」
玉露にぴしゃりと言われ、ユウは不満げに頬をふくらませた。
「とにかく、そろそろ村の人たちにも分かる形で何か大物を仕留めないと、この村での狩猟生活にも色々と支障をきたすニャ」
「わかったよ。……それじゃあ、ドボルベルクの大回転攻撃が最大で何回転なのか、尻尾に乗って確かめる依頼を受けるよ」
「だから、そんな依頼も絶対無いニャ! 」
「大体、ご主人様は何でさっきからやたらとドボルベルクにこだわってるんだニャ?」
ユウのとんでもない発言に、だらけていた2匹のオトモが一斉にツッコミを入れた。
「えー? いいじゃんドボル。 おっきいし可愛いし。あとたまにキノコも生えてるし」
のらりくらりとはぐらかすユウの様子に、オトモたちもそれ以上何かを言う気は失せてしまった。
「さあ、ひとっ風呂浴びたら渓流までキノコ狩りに行くよ」

――『それ』は、非常に飢えていた。
その巨大すぎる体躯と、高い体温を維持するためには、常に何かを捕食しなければ生きていけなかった。
ケルビやアプトノス、ズワロポスは言うに及ばず、ジャギィやフロギィ、時には大型の飛竜種でさえむさぼり食らう。
「それ」にとって、目の前に映る動くものは全て捕食対象なのである。
その時も「それ」は手当たり次第に食らい尽くし、ついにはそこを縄張りにする飛竜のつがいをも自らの胃袋に納めてしまった。
そうして、辺り一帯に餌となる生物が姿を消したことを悟ると、雷鳴もかくやという咆哮を周囲に轟かせる。
眼に爛々と赤く不気味な光を湛え、黒味がかった暗緑色の身体には、過去に負ったと思われる無数の古傷が、眼と同じ血の色に浮かび上がる。
そして「それ」は、再び獲物を求め、再び何処かへとさまよう。
決して満たされることの無い食欲を満たさんがために。

ユクモ村にほど近い渓流。
ここはかつて嵐龍アマツマガツチの襲来により放棄された旧ユクモ村の跡地で、現在は様々なモンスターの住処となっている。
元々栄養豊富な土壌で水も豊富であることから、様々な山の恵みも採ることができる。
その中でも、木々が鬱蒼と茂るエリアがある。
集会浴場で一風呂浴びたユウたちは、この場所で厳選キノコの採取にいそしんでいた。
「ご主人様ー、マンドラゴラがこんなに採れたニャ!」玉露が両手いっぱいにマンドラゴラを抱え、隣でキノコを採るユウに得意げな表情で見せる。
「おおー、よくやったのだ玉露」
「玉露ばっかりずるいニャ! ボクだって、こんなにハチミツを採ってきたニャ!」近くの蜂の巣からハチミツを採取していたかんぴょうが、不満そうにハチミツの壷を抱え、ユウたちの下に駆け寄ってくる。
「よしよし、二匹ともよくやったのだ」ユウは満足げにうなずくと、二匹の頭をなでてやった。
玉露たちは嬉しそうに目を細め、ゴロゴロと唸った。
「さてと、この辺は大体採取しつくしたし、夕食用にガーグァでも狩ってから村に戻ろうか」
そう言うと、ユウは二匹を伴い、ガーグァが群生する場所へと向かった。
滝が流れるエリアから坂道を下った場所に、湿地帯がある。
そこにはたくさんの雷光虫が生息しており、それを主食とするガーグァもまた群れを成していた。
湿地帯にたどり着いたユウたちは、近くの木陰でその様子を見ていた。
「うふふ、よりどりみどりじゃないか。 ……かんぴょう、玉露、いくよ」
「了解ニャ!」
ユウの合図と同時に、一人と二匹は木陰から飛び出す。
そしてユウはガーグァの群れの中でひときわ大きな個体に、かんぴょうと玉露はその次に大きな個体へ向け、それぞれ猛然と走り出す。
一心不乱に雷光虫をついばんでいたガーグァがユウたちに気付く頃には、その距離はかなり縮まっていた。
ユウは駆け寄りざまに腰の得物を抜き放つ。
何枚もの刃が取り付けられた双剣――ヒドゥガー改を閃光のごとく振りかざす。
刃竜ナルガクルガの鋭利なブレードをふんだんに使って作られた鋭利な刃は、狙いたがわず振り向いたガーグァの首筋を切り裂いた。
ガーグァは血飛沫を上げ、そのまま地面に倒れこんだ。
ユウはかんぴょうと玉露が狙った個体の方を向くと、二匹が足止めしているのを素早く確認し、そのままダッシュから切りつけた。
こちらも倒れると、二~三度痙攣したのち、そのまま動かなくなった。
ユウたちが仕留めた二匹以外、他のガーグァは全て逃げてしまった。
「よっしゃ、お疲れさん。 ……ちゃっちゃと剥ぎ取って、今夜はユクモ風ガーグァカレーにするよー。君たちの採ってきたキノコとハチミツもたっぷり入れるのだ」
「やったニャー!」
「ご主人様のガーグァカレー、楽しみニャー!」
小躍りして喜ぶアイルーたちを横目に、ユウは腰に差してあった剥ぎ取り用のナイフを抜き、手際よくガーグァから食糧となる生肉を剥ぎ取っていく。
アイルーたちに水辺から大きめの蓮の葉を持ってくるよう指示し、剥ぎ取った肉をそれに包む。
「そんじゃ、帰ろっか」
「了解ニャ!」
ユウたちは荷物をまとめ、ベースキャンプまで戻ろうとした。
その時である。
突如、ユウたちの頭上が暗くなった。
見上げると、何かが上空から飛来してくるのが見えた。
「かんぴょう、玉露、避けるのだ!」ユウはアイルーたちに指示すると、自らも荷物を担いだまま、緊急回避を取る。
その刹那、先程までユウたちがいた場所に何か巨大なものがズシリと音を立てて降り立った――いや、落ちてきたと言う方が正確であろうか。
「ケホッケホッ! な、何だ一体?」もうもうと立ち込める砂埃にむせつつ、ユウはそちらを見る。
やがて砂煙が晴れると、「それ」が姿を現した。
全身を覆う針のような剛毛としなやかな尻尾、両前足に左右三枚ずつブレード様の鱗を持つ飛竜。
身体的な特徴は迅竜ナルガクルガのそれであるが、通常見かけられるナルガクルガの体毛が漆黒であるのに対し、目の前の個体の体毛は、深い森を思わせる緑色であった。
ナルガクルガ亜種、別名を緑迅竜という。
ナルガクルガ亜種は琥珀色の瞳をユウたちに向け、鞭のように尻尾を地面に叩きつけながら威嚇する。
「ど、どうするニャ、ご主人様?」心配げにユウの方を見上げるかんぴょう。
「ん~」しばし虚空を見上げつつ考えるユウであったが、ややあって。
「太刀打ちできるだけの装備も、手持ちのアイテムも充分。ま、大丈夫でしょ」
「それじゃ」
「うん、狩ってしまうのだ」かんぴょうに対し、あたかも近所に散歩にいくような気軽さでユウは答えた。
でもその前に、言葉を続けるユウ。
「まずは隣のエリアで、今あるアイテムを調合してしまうのだ」
「了解ですニャ!」
ユウの言葉に2匹はうなずくと、脱兎のごとく駆け出した。
ユウも時折振り返りながら緑迅竜の様子を確認しつつ、オトモたちの後を追った。
ナルガクルガ亜種は威嚇はするものの、危害を加えない限り攻撃してくる様子はなかった。
そうしているうちにユウたちは、ナルガクルガ亜種から無事に逃げ仰せ、湿地帯に隣接する滝のあるエリアまで戻ってきた。
川のほとりで手早く調合を済ませ、準備を整えたユウたちが、ナルガクルガ亜種の待つ湿地帯に戻ろうとした。
その時である。
湿地帯の方から、咆哮が聞こえてきた。
しかしそれは、迅竜種に特有の耳をつんざくような金切り音ではなく、地鳴りにも似た、大地を震わせるほどの凄まじいものであった。
脳を揺さぶられるような轟音に、ユウとオトモは思わず耳をふさぐ。
「鼓膜にビリビリくるこの咆哮……。まさか!?」
動揺しながらも、ユウたちは咆哮の主を確認するため、湿地帯へと引き返す。
木陰に隠れつつ、様子を確かめようとした彼女らの視界に、驚くべき光景が飛び込んできた。
ナルガクルガ亜種が何者かと対峙していたが、ユウたちのいる位置からでは、それが何者であるかを確認することはできなかった。
しかし、ついさっきまで五体満足だったはずのナルガクルガ亜種が、見るも無残なほどにぼろぼろの状態だったのである。
両前足に生えたブレードは刃こぼれし、体中が何かに食いちぎられたような無数の傷を負っていた。
ナルガクルガ亜種は息も絶え絶えの状態で足を引きずり、その場から逃げ去ろうとする。
その刹那。
何か巨大なものが逃げようとするナルガクルガ亜種の上にのしかかった。
それは、緑迅竜よりもはるかに大きな獣竜種であった。
顎に無数のトゲが生えた小さめの頭部や前足とは対照的に、異様なほどに発達した胴体と後ろ足。
全体的にずんぐりした体型は、暗緑色のぬめぬめした光沢も相まって、まるで巨大なヒルが足を生やして立っているかのようであった。
その獣竜種は、緑迅竜を巨大な前足で踏み付けると、その小さな頭部とは不釣合なほどの巨大な口を開き、獲物の肩口に食らいついた。
悲鳴にも似た咆哮を上げる緑迅竜。
そんなことはお構いなしとばかりに、「それ」は食らいついた肩口から肉を引き裂き、咀嚼する。
断末魔の悲鳴を上げながら必死に抵抗する緑迅竜であったが、その声もだんだん細くなり、やがて動かなくなった。
「それ」は動かなくなった獲物のあらゆる箇所に食らいつき、なおも捕食を続ける。
「やっぱり、イビルジョー……」ここに至り、ようやくユウは乱入してきた者の正体を知ることになった。
イビルジョー。
凶暴竜とも呼ばれるそれは、自身の高すぎる体温ゆえに消耗しやすい体力を維持するため、常に何かを捕食しなくてはならない習性を持っている。
その捕食対象は幅広く、草食竜などだけではなく、時には、まさに今のように飛竜種さえも糧とすることもある。
そのため、狩猟場の生態系をも壊しかねない危険な存在である。
「どどど、どうするニャ? ご主人様」かんぴょうは動揺しきった口調でユウに聞く。
「……そんなの、知れたことなのだ」ユウは静かな口調で答える。
「逃げるのだ!」
言うが早いか、ユウは一目散にその場を走り去った。
「あ、ひどいニャご主人様!」
「ボクたちを置いていかないでニャー!」
慌ててユウの後を追う玉露とかんぴょう。
その場には、その肉体のほとんどを捕食されたナルガクルガ亜種の亡骸と、勝ち誇るように咆哮するイビルジョーの姿だけがあった。

(続く)
プロフィール

蒼坂

Author:蒼坂
関西在住の会社員。
時々しがないネット物書き兼2chカラオケ板紅白歌合戦の参加者。

最近のコメント
最近のトラックバック
フリーエリア

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

MHF
Now Loading...

公式イベントスケジュールへ
ブログ内検索
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。